去りゆく者 [思い出・雑感]
先日、中学時代の同窓会があった。卒業して、実に39年。今や
すっかり容姿に変貌を遂げた者、あるいは少なからずいい意味で
予想を裏切り、社会的ポジションを盤石にした者など…。
得てしてこのような催しには、現在の状況が本人的に歓迎せざる
状況である場合には、そいつは現れない。だから、おおむね、参加
した者たちの笑顔は明るい。
そしてもちろん齢54を数える歳ともなれば、当然逝去した者たちも
いる。病に冒され、過酷な闘病生活を強いられ、そして去っていった
彼らを思うと、やはり心にさざ波が立つ。
その一人にFがいた。Fとは中学時代によくいっしょに遊んだ。彼は、
勉強はあまり得意ではなかったが、それはこちらとて同じこと。
級友たちは抜群に優秀であったが(同窓会に行けばそうそうたる大学
OBや医師、歯科医などが集結する)すっかり自らの知的レベルに
愛想を尽かしていた彼と私は、遊ぶことに熱中した。
その彼が生前、私にこんなことを言ったことがある。8年前に開かれた、
同じように中学の同窓会でのことだ。FとN、そして私は当時、漫画を
描いていた。漫画家になりたい、という気持ちがあった。
それで3人の漫画を持ち寄って、ひとつの本にしようということになり、
雑誌風のタイトルを付けよう、ということになったのだ。つまり表紙を
つくって、漫画雑誌風にしようという魂胆だ。
そのタイトルは「ありんこ」。私が考えた(らしい)。当の本人は全く
覚えていないのだが、Fはそのタイトルがいたく気に入ったらしく、
そのことをずいぶん誉めてくれた。「あの名前はよかった!」幾度もFは
繰り返して言ってくれた。
なぜ、彼があれほど誉めてくれたのか?彼のどのような琴線に、あの
名前が触れたのか?それは私には分からない。ただ、彼を思う時に、
必ずそのことを私は思い出す。遠く、懐かしく。そして少し屈折した
子どもの頃の自分を、もういちどトレースしながら。
印象に残った言葉、いつまでも大事に覚えておきたいですね。「ありんこ」チビだけど、せっせと休みなく漫画を描いていこうねってことでしょうか、人生もまた。
大学時代に同人雑誌をつくりました。名前は「つむじ風」 みんなツムジが曲がっていたのかな??懐かしい半世紀以上前のお話です。
by okko (2008-09-16 10:19)
高校時代の友人に、「toroの言った言葉で考えが変わったんだよ」と
言われたことがありました。私は何と言ったのか全然覚えていません
でしたが、そんなこともあるみたいですね。
そう考えると、一つひとつ発する言葉も大切にしなくちゃと思います。
また言ったことを思い出にしていてくれているって不思議であり、
うれしいことだなあと思いました。
by toro (2008-09-16 12:10)
子供時代のこんなちょっとした屈折はとても共感が持てます。
私も「勉強はあまり得意ではなかった・・・」の口で、また、そのような人間は「類は類を呼ぶ」とでもいいましょうか。
優等生とは全く違ったスタイルで遊んだものでした。
Fさん、「ありんこ」も気に行っていらっしゃったでしょうけど、きっと
もりけんさんのことも大好きだったのでしょう。
by g-life (2008-09-16 22:13)
知ってるけれど知り合いではない、紹介はできない
そんな人が知り合いの中にできることが悲しい
by engrid (2008-09-19 16:50)
okkoさん、
今考えると、どうしてそう言う名前にしたいと思ったのか?
まったく覚えていないのですが、きっと何か思うところが
あったんでしょうね…。忘れられない言葉、大切にしたいです。
toroさん、
本当ですね。うれしいような、はずかしいような、それでも
そう言ってもらえると、自分の人生もまんざらではなかったように
思えてしまいますね。
g-lifeさん、
自らが呼び寄せた、あるいは呼び寄せられた「類」は、そしていつか
ふえたり減ったりを繰り返しながら、思い出を残していってくれる
のでしょうね。
engridさん、
そうですね。そういう人もやはり世の中、それなりに多いわけで…。
by もりけん (2008-09-27 01:00)