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よくあること [雑感]

私と関係のある大学に新設の学科ができるということで、受験生向けにパンフレット
をつくった。その大学で先日大学祭と併せてオープンキャンパスが開催されていたので、
パンフレットをつくった学科のデモンストレーションが行われている教室に行った。

その日は大学の紹介用の映像を撮影する日だったので、ちょっと気になってのぞいて
みたわけだ。ところが私の(厳密には私と友人のデザイナーが)つくったパンフレットは
そこに置かれていなかった。その代わりに(その学科の)教授がつくったパンフレットが
置いてあった。

ところがそのパンフレットがひどい代物であった。学科はデザイン系なのでもちろん
グラフィックデザインと、近いと言えば近い。けれどもそのパンフには、教授が自分
の考えること、思うことが羅列されているだけで、オープンキャンパスにやってきた
高校生には全く訳の分からない内容のものになっていた。

このパンフレットは誰に向けて、何を言おうとしているのだろうか?少なくとも
私が制作したパンフレットには、高校生がこの学科に興味を持ってくれるように、
あるいは将来の進路としてこういう世界もありますよ、ということを伝えたいと
いう気持ちが込められている。

しかしこれは自分ではそういうことがよく分かっている、と勝手に思い込んでいる
人たちによくあるパラドックスだ。広告の仕事をしていると、まさしくこういった
状況によく遭遇する。「そんなことはこの世界のプロである私の方がよく知っている」
と。

この教授の場合も同じケースだ。自分がデザインの世界にいるから、デザイン的に
きれいにまとめてあれば、そして自分の考える世界観が提示されていればいいと。
これが大きなミスになっていることに、もちろん彼は気付かない。有り体に表現すれば、
自己満足。独りよがり。

広告は難しい。販促とは違う。その境界線も曖昧だ。ただ言えることはわれわれは、
経済活動の一環として顧客の利益を目指し、ドメインの確保を考えていることだ。

似て異なるものへのリスペクトを怠ると価値判断の狂いが生じ、無意味なものが
この世にはびこる。今回はその典型。


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ばくはつごろう

そういうお得意の仕事は二度目はお断りでござる。
by ばくはつごろう (2008-06-06 00:13) 

もりけん

ごろうちゃん、
やっぱりあるよね、そういうこと。でも、実は私と同じように感じている
准教授の方もみえるんです。一事が万事ですからその方もかなりお疲れ
のようです。
by もりけん (2008-06-06 12:05) 

engrid

あれっ!あらら  な状況ね
独りよがりな思い込みって 気がつけばいいけれど
そうでない場合は 滑稽でしかないかも。。。
うぅ~ん せめて指摘されたら、素直に改める気持ちだけは忘れずに
by engrid (2008-06-06 14:37) 

めぎ

研究の世界は独りよがりであることが何よりも大切ですからねえ。そういう世界に憧れて、分からないままについてこい!というのが、普通の教授の考え方ですね。誰にでも分かるものは研究じゃないですからねえ。大学は、本来研究機関なので、それもまたそうあるべき姿なのではないかと思います。文学研究も、独りよがりもいいところ。でも、独りよがりであればあるほど魅惑的。
ただ、教育機関であることも事実な訳で、多くの学生は学部だけで卒業して就職するわけですし、その辺りのことも考えなければなりませんね。例えば、いくら文学研究の深く素敵な世界を垣間見たところで外国語が話せるようにはなりませんから。会話能力を磨きたかったら会話スクールに通え、というのが名だたる教授の考え方なんですけど、多くの大学は、一般学生のためにずいぶん信念を曲げて会話教育に力を入れ始めてますね。
by めぎ (2008-06-06 18:24) 

g-life

同じような「憂き目」にはよく出会います。
依頼主に「本当に人を集めたいと思ってんのか!」と
食ってかかりたくなることシバシです。
集めたいと思う人の地盤に立って、どう知らせて行ったら
こっちを向いてもらえるのか、そんなことを考えるのは、
とても面白いと思うのですが、そこに徹底できないのが
研究者の持ち味とでもいうのでしょうか。
by g-life (2008-06-07 10:37) 

mompeli

何やってもにくめないくらい魅力的な独りよがりな教授さんだったら
パンフレットがなくても学生はよってくるでしょうけど
単に思い込みの激しい方だったら
どんなパンフレット作っても 若い人はこない…かもしれませんねぇ
by mompeli (2008-06-07 14:34) 

もりけん

engridさん
さすがに指摘はできません。それに年齢的にも彼が素直に認めるのは
不可能でしょうね。


めぎちゃん、
研究における独特の視点を独りよがり、というのであれば多くの
発見や解析につながる素晴らしいものだと信じています。思うのは、
われわれは大学経営という観点から、顧客(学生)を獲得するべき
だと考えているという点です。それは安定した経営基盤を確立する
ことがいかに大学という研究機関にとって重要なことであるかを
いちばん真剣に受け止めなくてはいけない、という使命感があるから
です。先生が選手ならわれわれはグランド整備を黙々とするだけです。


g-lifeさん、
明らかに感じるのは、学生を集めようと思っているのではなく、自分は
すごい人間なんだ、と主張したがることが多いということです。でも、
それは入学した後からしていただければいいことだし…。


mompeliちゃん、
結局、人間的な魅力に富んだ人は独りよがりな分だけ人を認めてくれる
気がします。実際そういった先生方も多いと思います。今回の方は、
自信があるくせに、なぜだかあらゆる方法を用いて自分をアピールしな
くてはいけない!という、裏腹な妙な焦燥感があるんでしょうね。


by もりけん (2008-06-08 03:59) 

okko

自分が何を学びたいか、その信念がつよければ、大抵のことには左右されないのでしょうけど、どんなモノかな?と興味を持ってもらうのには、やはりひとりよがりはいけませんね。 ご苦労は報われなかったのでしょうか?
by okko (2008-06-09 15:40) 

もりけん

okkoさん、
そういうことになってしまいますね…。何というか、最初から自分が
そういった一切合切を仕切りたい!という感じでしたからね。
by もりけん (2008-06-09 18:17) 

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