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昔の金庫 [思い出・雑感]

今から随分前のことだが、昔から続いている醸造会社に取材に行ったことがある。その時に江戸時代から残っているさまざまな道具類を見せてもらった。それらのほとんどは味噌醤油をつくるためのものであったが、中には誤って井戸に落としてしまったものを拾うための道具とかもあった。で、とくに感心したものがあった。

それは江戸時代にその醸造元が金庫として使っていた家具?である。こいつがすごいんですな、実は。いや何がすごいかって、とにかくその引き戸が開けにくい。つまり俗に言うところの「建て付け」がすこぶる悪い。さて、この金庫はどのように使われていたかというと、もちろんお金やら書類やら、大切なものをこの中に入れてしまっていたわけだが、盗まれては困るものばかり入れてあるわけであるから、ごっつい南京錠を付けて使われていた。要するに、貴重品を中にしまった後はこれでもか、というようなでかくて立派な錠前を付けていたわけだ。

ここで、話を元に戻すと、立派な錠前がついたこの所謂金庫は、当たり前だが相当な腕前を持っていたであろう職人によってつくられていたはずである。で、あるにもかかわらず何故?建て付けが悪いのか?そう!あえて建て付けを悪くして、否、正確に伝えるのであれば、それは建て付けが悪いのではなく、その引き戸を開こう(引こう)とすると、断続的に大きな音がするようにつくってあったのだ。

見るからに頑丈そうなその錠前を、これまた見事な職人技で破った泥棒は、喜び勇んでその引き戸を開ける…。すると、がったんがったんとびっくりするような大きな音がする。なーるほど、という工夫である。しかも、これはただ単に泥棒対策というわけではなく、身内の人間がその金庫を開けた時にも「あ、誰かが今金庫を開けたな」ということがわかるように、という狙いもあったとのことだった。

ところでこういう発想こそクリエイティブを生業とする我々にも必要とされる知恵、なんじゃないだろうか?なーんてね。今日は手堅くまとめてみました。

もうちょっとまめに更新しなくちゃねぇ…。


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めぎ

たまーに更新してくださるのも、わくわくして好きですよ♪
by めぎ (2007-10-02 03:17) 

もん

開ける順番が違うと、肝心の金庫抽斗が抜けないから、盗むなら箪笥自体を抱えるしかないとかね・・・ホント、昔の方の技が小手先の巧妙さじゃないことには、ただただ舌を巻くです。醸造違いですが、自分が愛飲している造り手さんは、いまだ木製の圧搾機(機というより木なんですが・・)に小さな琺瑯のタンクで、近代設備が一切なく、多少専門的なことを伺っても「うーん・・勘でやってきたからだけですからなぁ・・説明できるほどのこと、なーんもしてないもんで・・」。当然量産なんて無理な話。古稀をとうに過ぎた方ですが、これが実に美味いんですなぁ・・。
by もん (2007-10-02 08:47) 

toro

親戚の古い家に引き出しを開けるたびに、いちいち「ひゃ~、ひゃ~」と
音の出るタンスがありました。「なんだこれ?」と言っていると、わざと音が
出るように作ってあるんだと教えられました。
「なるほど、うまいな~」と思った記憶が……。隠し扉もあったような…。
でも、デザインが何なんで、廃棄されてしまいましたねー。
意匠は別としても、発想は残したいものだと思いましたよー。
by toro (2007-10-02 08:53) 

きりきりととと

クリエイティブは、「誠実さ」だと感じる今日この頃です。
by きりきりととと (2007-10-02 14:08) 

toro

「ひゃ~、ひゃ~」ではなく、「ふぁ~、ふぁ~」というハーモニカのような音
でした。訂正します、すみません。
by toro (2007-10-02 18:34) 

もりけん

めぎちゃん、
ありがとうございまーす。私にめぎちゃんのような向上心があったら、とつくずく感じる今日この頃でございます。


もんちゃん、
そういう造り手さんて、どんどん減っていってしまっていますよね。私も数年前に仕事で新潟の小さな日本酒の蔵本に取材に行きましたが、そこも実は名古屋の某お酒メーカーに買収されて、今までとは違う名前でお酒を販売することになった、といういきさつでした。きれいに掃除された蔵の中には杜氏さんが寝泊まりする部屋があったりして、昔からの造り手さんだったんでしょうね。何だか、心中複雑でしたねぇ。


toroさん、
「ふぁ〜、ふぁ〜」って音の出るタンスなんて面白いですねー。昔の人の知恵ってすごい、というより、なるほどー、ってことが多いですよねー。


hyperbomberさん、
もう一歩踏み込んで、さらによくしようとすること。それが誠実さにつながるんでしょうね。ゴルビーの広告もhyperbomberさんですか?
by もりけん (2007-10-03 01:14) 

みかまん

なるほどね、そういう知恵や技術って素敵!
もりけんさんの記事読んで、そう言えば、育った家にも古い者がたくさんあったな、今度は記事にしようって思っちゃいました。
本、作家、お返事しようと思ったら、何度やっても送信できない文字配列があるらしくあきらめてしまいました。
一体私、何がイケナイ言葉だったのか笑
by みかまん (2007-10-03 03:41) 

tsukamoto

講座も終盤です。講座でも大学でも「クロスメディア」という言葉をよく聞きますが、単にインターネットとテレビの融合ということではないと思います。先生の取材された「金庫」のように古くからあるものでも周囲に意外な効果をたくさんもたらすものならクロスメディアたりうると思っています。
by tsukamoto (2007-10-03 11:47) 

新潟に加茂ってところがあります。そこがまあお酒もおいしいんですけど 建具で有名。なもんでそのお仕事場をちょこっと覗かせていただいたことがあります。倉庫には並ぶ製品の中には家具類も並んでいたのですが その中で燦然と輝いていたのが桐のタンス。それがやっぱり音の出るタンスで それもひとつ閉めるとその上下が「ふぁ~」と浮き出てくる。それだけ密閉性が高いってことなのですね。そして小物入れの奥には「隠し金庫」があったのですが その鍵がカラクリになっていて 一度説明してもらっただけじゃ「???」ってな代物でした。すごいなぁ~と見ていたら「ここにある製品はどれも釘使ってないんですよ~」。つまり木に溝を掘って組み合わせているのだそうで もう ほぉぉぉぉ…って感じ。でもそこもやはり後継者不足で悩んでらっしゃいました。。。
by (2007-10-03 23:24) 

もりけん

みかまんさん、
温故知新、ってやつですね。ところで、どうして送信できなかったのでしょう?あまりに過激な内容であったためでしょうか?うーん、気になります…。


tsukamoto君、
講座の終了パーティーが12日にあるでしょ。その案内が来ていました。一応、出席にしておいたけど何だか遅い時間から始めるんだね。


mompeliちゃん、
今更ですが、そういう家具、いいですねー。「ふぁ〜ふぁ〜」っていう音の正体はそういうことだったんですね。ところで、隠し金庫とかって外国にも似たようなものってあるのでしょうか?
by もりけん (2007-10-04 14:26) 

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