そして僕は老いていく。 [私]
あれは何歳頃のことだったのだろう。あの頃はどうやってお金を
工面していたのだろうか。おそらくあの頃は今のように酒を痛飲
することもなかったから、それほど必要ではなかったのかしら。
名古屋の繁華街にある洒落たジャズバーで「ジョン・コルトレーン
&ジョニー・ハートマン」を聴きながら、すっかり気分は大人みた
いだったよ。
東京の東郷神社の近くにあった仏語で「どん底」っていう名前の店で、
みんなでトランプをしたっけ。そんな僕らをムーンライダースの鈴木
さんが笑いながら見ていたね。
京都の円山神社では週末毎にライブがあったのかな?終わりがけに
行くと無料で見ることができた。ウエストロードBBとか、サウス・
トゥ・サウスとか訳分かんない高揚感があって、うん、よかったー。
ああ、そうだった、そうだった。あの頃は、
「京都」と「東京」しか行かなかったんだ。
ジャズ喫茶がいっぱいあったし、凝ったオーディオが置いてある店が
多かったから、京都にはよく行った。YamatoyaとかDownBeatとか。
高野悦子の「二十歳の原点」を読んだし、そうだ!京都行こうって…。
柴田翔の「されど我らが日々」に描かれていた女性に激しく憧れてしま
ったなぁ。僕も積み木をくずしてほしかった。
下北沢のMASAKO、吉祥寺の赤毛とそばかす、それから西洋乞食。高円
寺のキーボード、中野のKIDO。名前さえ逸してしまった多くの店。
恥ずかしい思い出ばかり。いつだって顔を赤くして僕は生きてきた。
そしていつの間にか、僕は悲しみやよろこびに、すっかり鈍感になって
しまったんだ。
2009-05-23 03:39
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