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私の住宅 [住宅について考える]

私の住む家は、4年ほど前に建った。設計は友人の建築家(というか設計事務所)に頼んだ。とは言え、私もおおよその図面を描いて自分の望む空間を提示した。完成するまでには、まぁ、いろいろな問題は当然あった。そんなことは当たり前だ。しかし、100パーセントではもちろんないが、概ね気に入っている。気に入っていると言うことはどんなことかというと、つまり「愛着」が持てる、ということだ。

完璧な物など、世の中には滅多にない。なにしろ人間は気分によって、人格まで(一時的に)変えてしまう生き物だからだ。大好きな人とだって、虫の居所が悪ければ喧嘩をしてしまう…。それが人間だ。だから「愛」という言葉がついた「愛着」が必要なのだ。「愛」とは自分の気まぐれや、心のさざ波を包括して、それでも結局のところ「やっぱり気に入っている、大好きなんだ」と思うことが出来る、ということ。つまり「完璧」ではないことを自覚して、それそのものを楽しみながら生きていくために必要な「通行手形」なのだ。

私の家の2階には、東面と南面に大きな開口部がある。そこは足下から2メートルくらいの高さの、いうなればでっかい引き戸になった窓である。そこからは春になれば(私の家は川沿いにあり、その土手には桜の並木がある)満開の桜を大パノラマで愛でることが出来る。しかし、危ないと言えばかなり危ないかも知れない。なにしろ転落防止のための策は何も講じられていないからだ。さらに3階にも高さはそれほどでもないが、やはり、足下から開口部が設けられている。ここも同じように危ないと言われれば当然かなり「危ない」。

ところで、我が家を訪れた人々の中には、これらの開口部を指して「危ないから何とかした方がいい」とかいう輩がけっこういる。私はそういう人が嫌いだ。私の家は私と家内の物だ。どのような家にするかは我々の自由だ。落下するかも知れない開口部は、逆に言うならそれほどの大きな開口部から桜を愛でる悦びを享受できる希有な窓である。似たようなことはいくつもあった。うちの冷蔵庫はGEに特注した(塗装色を)物だ。それを見て、日本製の冷蔵庫の方が機能的に優れている、とのたまう人物もいる。何をか言わんやだ。あるいは、ここは使いにくいだの、デッドスペースだの…。

先に「愛着」という言葉で表現したが、自分の家族はあばたもえくぼで、自分で悪く言うのはいいが、人にはそういうことは言われたくない。家だって同じである。第一、そういうことを言う人の家はどこかで見たような外観の、ありふれた間取りの家であることが多い。(あるいは。どスタンダードな賃貸住宅…)それで「愛着」が持てるのだろうか?これはかなりの疑問である。

さらに私は「バリアフリー」を住宅に取り入れていくということにも、諸手を挙げて賛成できない。日本ほど寝た切り老人の多い国はない、と言われている。それは周りの者がそうし向けてしまうからだ。おむつをあてがい、ベッドに寝かせ、自力で色々なことをしようとする気持ちを摘んでしまう。だから、過剰なバリアフリー仕様はそれを認めてしまうことにつながる。しかも、今は元気であるのにもかかわらず、将来のことを考えて、とか言う人がかなりいる。私はゴメンだ、そんなのは。見た目にもかっこわるい手すりなど付けたくもない。そうなったときに考えるべきことを、誰かの策略に乗って「用意周到にすることが素晴らしいこと」として、みんなの気持ちを洗脳していく。それこそが住宅リフォーム詐欺の被害に遭っている老人たちに、共通してすり込まれている観念だと思う。

人生やライフスタイルに対する考え方は千差万別だ。どれが正しいと言うことはない。けれども、どれが好き、という感覚は明らかに一人一人の心の中に存在している。私にしてみれば、それこそが最も重要視するべきことで、結局は私のアイデンティティは、それなのだと考えている。


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きりきりととと

同感です。
by きりきりととと (2006-02-05 11:35) 

もりけん

hyperbomberさん、実は今回のブログは、hyperbomberさんのミースのことが書いてあるブログを読んで、書こうと思ったのです。30年前に、友人の親父が日建設計に勤めていたのですが、ミースの「レイクショアアパートメント」をシカゴに見に行ったときの話を延々としてくれました。そんなことや、フランスへ行って、コルの「サヴォワ」邸を見に行ったときの感動を思い出し、自分の家のことを書こうと思ったのです。
by もりけん (2006-02-05 14:25) 

せせらぎ

いつも、もりけんさんのブログ更新を楽しみに、ほぼ毎日遊びによらせていただいてます。「原爆に思うこと」の記事から、もりけんさんの書くブログのファンとなっております。
もりけんさんに触発されて、私も拙い文章力の持ち主ながらも、見よう見まねでブログをはじめました。勝手ながら、ブックマークにこちらのブログ登録させていただき、私のブログからリンクさせていただきました。いろいろな方にもりけんさんのブログのファンになってもらいたいと思ったからですが、ご迷惑でしょうか?とりあえずご報告と思いまして書き込みさせていただきました。
今回の「愛着」のお話も、興味深く、大変面白かったです!ついつい昔を思い出しました。幼い頃拾ってきたお気に入りの石や、お菓子の箱に入ってる綺麗な紙など大事にしてたあの頃。大人にしてみればガラクタでも私にとっては宝物だったそれらこそ、「愛着」そのものだったなぁと・・・。
大人になった今、物に対しては勿論、生き方において「愛着」にも似た譲れないポイントというものが最近強くなってきて、人間関係にあまり期待もしない、なんか乾ききった生活がつづいてますが、もりけんさんのブログみてるとなんか元気が出ます!もりけんさんのように、自分の思う・信じることを上手く冷静に伝えられる人間になりたいと思うこの頃であります。
by せせらぎ (2006-02-05 14:56) 

もりけん

せせらぎさん、過分なお言葉に恐縮しています。リンクしていただけることはもちろん、私が気ままに書いているこのブログを、読んでくださっている方がいることに内心驚きながらもうれしく思います。本音を言えば、いつもこんなことを書いていていいのかなぁ…?なんて、思い悩みながら内容を考えているんです。

以前も議員さんに頼まれて「名古屋の活性化」についての意見を、公の会(正しく公会というのですが…)述べましたが、ちょっとばかり辛辣であったようでその後は呼ばれなくなりました。そのときに同席になった他大学の教授や学長たちはやはり当たり障りのないことを言っていました。ま、でも、自分が間違っていると思うことに、相づちは打てないですよね。

てなことで、これからもごくごく個人的な意見を書き綴っていきます。どうぞ、よろしくお願いいたします。
by もりけん (2006-02-05 15:27) 

せせらぎ

ハハハ!思ったとおりの方ですね!もりけんさん♪
私が気に入った方だけあります!私も、自分が納得できない事に相槌うてないタイプの人間です。
長いものに巻かれたり、事なかれ主義のように生きるのが大嫌いなものですから、もりけんさんの公会でのお話、かなりナイス!と思って読みました!
どんなピリッとしたご意見を述べられたのか、その場で生でお聞きしたかった!
もし、その場に私がいたならば、もりけんさんの意見に、スタンディングオベーションしたことでしょう!たとえ一人であろうと、心から熱い拍手を送りましたよ(笑)本当、くさいものにはフタをする的な風潮の世の中、自分の意見も持たずゴマすりが上手いだけの、薄っぺらい人間や浅い人が多どうかとおもいますよね。
by せせらぎ (2006-02-05 16:02) 

もりけん

せせらぎさん、そんな…、かっこいいものではありません。自分としては、一所懸命にその人の意見を理解しようと努めているのに、ある一瞬に自動的に反応して、反論してしまう私が登場するのです。でも、私は意見が違ったことに対しては根に持たないので、次に会ったときにもその人に気軽に話しかけたりすると、嫌な顔をされて理由が思い出せなかったりします。(家内はあんたはアホなだけだ!と言います)人が嫌いだと言うより、考え方をきちんと知りたい、おかしいことはおかしい…。そんな気持ちが強いんですね。
by もりけん (2006-02-05 16:42) 

きりきりととと

そうだったのですか、なんだかいつになく熱い想いを記事から感じましたが。
恐縮です。
by きりきりととと (2006-02-05 20:03) 

rapisu

わゎ~わゎ~  同感 同感  全くです。ほっといてくれです。
by rapisu (2006-02-06 18:16) 

rapisu

Guestじゃないよ~ん。愛読者です。
by rapisu (2006-02-06 18:21) 

もりけん

hyperbomberさま、そーなんですよ。ちょっと熱かったかも…。(頭を掻いています)いつもブログを拝見しながら、日本はもとより海外でも仕事をされ、さらにはイタリア語まで習得しようとされていて、すごい方なんだなぁ!と敬服しています。(女性からの支持率が高いのがうらやましいですが…笑)私もおそらく近い世界で仕事をしていますが、全然スケールが違うなぁ、と…。素晴らしいバイタリティーを見習わなくては、と思っています。


rapisuさま、いつもお読みいただきありがとうございます。rapisuさんのブログ、早く読みたいです。楽しみにしています。
by もりけん (2006-02-06 23:23) 

arbinoni

うちもGEの冷蔵庫(ステンレスの2ドア)です。なぜか田舎の電器屋で一台ポツンと売れ残っていたものを、「こんなの日本じゃ売れるわけないでしょ」と値切り倒して半値以下の10万円ポッキリで買ってきたのです。
でも実はとっても良い製品です。ミストだのマイナスイオンだのって訳のわからない機能もついていないし、棚もガラスだし、温度調節も手動でシンプル。それに、アメリカ製の白物家電って、10~20年は普通に持つんですよ!日本の家電の寿命は5年でしょ?唯一の難を言えば電気を喰うことくらいですね。
by arbinoni (2006-03-10 15:38) 

もりけん

arbinoniさん、GEの冷蔵庫とか(今さらながらの海外家電ブームの昨今に、何だか気恥ずかしい気もしますが…)って、「愛嬌」とかがありますよね。おっしゃるように長い間使ううちに、それこそ「愛着」が湧いてきて、言ってみれば「うちの冷蔵庫」って気がするんですよね。何でしょうね、それって。うちはガスレンジもマジックシェフですから、端の人からはもう何でシステムキッチンに一体化されたやつにしないの???って反応です。オール電化は否定しませんが、へそ曲がりの私は危険だからと言う理由で(ガスの)炎とかを遠ざけてしまうことに懐疑的なのです。(うちには子どもはいませんが)子どもが「炎」を知らないまま、大人になっていくことは、あきらかに間違っていると思ってしまうのです。炎とは熱いもので、そこから可燃性の物には火が移っていくこと。それぐらいのことは、知っておいて、経験しておいていいはず、だと思うのです。
by もりけん (2006-03-11 01:54) 

sequenz

この間いただいたメールで森健さんのブログを知り
いまさらながらなのですが
コメント書かせてもらっています。

この間お話を伺ったことは
こんなに前から
考えていたのですね。

やっぱり森健さんと出会えたのは
偶然ではなく必然だったのでしょうか。

森健さんがこの文章を書かれたとき
まだアパートは完成形ではなく
構想段階でした。

Uさんも森健さんの考えを知っていたわけ
では無いと思うので
森健さんが考える
建物に近い物が
偶然造られ
そして
出会えたのだと感じています。

差し支えなければ
森健さんのブログ
僕のブログで
今度紹介してもいいですか?
by sequenz (2007-09-09 23:12) 

もりけん

わ、sequenzさん!
驚きました!わざわざ来てくださったんですね!感激です!(!だらけ)私の書いている内容が、sequenzさんの周りの方々に悪印象を与えることがないのであれば、どうぞ紹介してください。かなり、好き勝手書いていますからね…。
by もりけん (2007-09-10 23:27) 

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