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原爆に思うこと [戦争・原爆・日本人]

どういう訳か、かなりの文字数を書いた原稿が消えてしまった…。かなりのショックであるが気を取り直してもう一度書くことにする。今日は「原爆」のことである。

先日、山口瞳さんの本を読んでいたらこんなことが書いてあった。それは山口さんが、サントリー宣伝部に勤めていた頃の話である。サントリーの就職試験を受けたコピーライター志望の若者が、かなりの倍率の1次試験を突破して面接にやってきた。2次試験の面接でも彼は面接官の質問によどみなく答え、学生であるにも関わらず広告用語を熟知しており、非の打ち所のない受け答えをしていたそうだ。けれども、その非の打ち所のなさが逆に気になった山口さんは、彼にこう質問したそうだ。「ところで、あなたは8月6日と9日、そして15日は何の日だか知っていますか?」

彼は「知りません」と答えた。結果、山口さんは彼を採用する気にはなれず、採用不可にするように社の採用担当に進言したとのこと。さもありなん、である。この話は相当前のことだと思われる。何と言ってもまだ山口さんが作家として活躍する以前の話、サラリーマンとしてサントリーの宣伝部に勤めていた頃の話なのだから。

私は原爆を投下した、と言う理由でアメリカを責める気にはならない。戦争は狂人がイニシアティブを握るものだと思うから…。で、なければそもそも戦争は起こらない。とは言え、である。その戦争であっても最低限のモラルはあった。何せ「戦争法」などという国際法が事実存在していたのだから。つまり、宣戦布告の義務、とかである。あるいはダムダム弾は使わない、とかもその中の事例である。で、アメリカ人は真珠湾攻撃を仕掛けてきた日本が悪い!原爆は戦争を終結させるために使われたのであって、アメリカは全く悪くない。とキッパリと言い切る。先日のテレビ番組にも広島に原爆を投下した際に、その模様を撮影していたアメリカ人が出演してそう言っていたそうである。真珠湾攻撃については真相がまだよく分かってはいない。日本軍はアメリカの日本大使館に向けて、宣戦布告の旨を通告するよう電文を送ったが、大使館員が不在で実際にその電文を見たのが数時間後であった。その前にすでに真珠湾攻撃が行われてしまったとか…。真相は分からない。

ただ、ここで思うのは「原爆」によってもたらされた甚大な被害と、その後の被爆者のことを考えれば、それを「教訓」あるいは「戒め」としてアメリカも、あれは間違っていたと認めるべきだということである。もしも仮に原爆投下が「戦争終結のため」という正義であれば、(そう言い張るのであれば)アメリカはベトナム戦争でも原爆を使うべきであったし、イラクにも核ミサイルによる攻撃をすればいい、ということになる。だって、それは「正義」なのだから…。間違っていないというのであれば、その後も放射能をまき散らす兵器を使うことに何ら逡巡する必要はない。

日本が正しかった、などとはもちろん思っていない、細菌兵器の研究で中国人を「丸太」と呼んでいたことも事実である。南京大虐殺も、従軍慰安婦問題でも日本は弁解の余地はない。しかし、今だにそのことをアジア諸国から糾弾され、罪もない日本人留学生がビール瓶で頭を殴られたり、サッカーの応援に行っただけの日本人が「小日本人」などと侮辱されている。それもまた、事実である。これはどういうことなのか?つまり、原爆を世界で初めて投下した国がアメリカではなかったら、世界中の国はどう思ったであろうか?ということだ。もし、ドイツが、イタリアが、そして日本が、その最初の国であったなら…。何だか、世界はアメリカに寛大である。

ベトナム戦争でナパーム弾を使い、枯れ葉剤でベトちゃん・ドクちゃんらの人生を台無しにしたアメリカは、それでも平然としている。「正義」などは戦争ではありえない。だからこそ、もういちど「原爆」について考えなくてはならないのではないだろうか…。そして、私たちは日本人としてやはり、永遠に「原爆」については語り継いでいかなくてはならない。

アメリカは不思議な国である。大リーグで活躍する野球選手は、肌の色に関係なく拍手と歓声を受けている。その影でKKK団は白人至上主義を掲げて活動している。かつてベトナム戦争で疲弊していた頃のアメリカ人はマクガバンを大統領候補に押し上げ、あわや、というところまで対立候補を追いつめた。実際、ジーンズをはいた平和主義者のジミー・カーターはマクガバンの後継者として大統領に選出された。自由と平和の国、アメリカはまた、日常的に銃による殺傷事件が起きている国でもある。

エノラ・ゲイで広島に原爆を投下したパイロットは英雄気取りで、全米中で講演会を開催している。講演会終了後は著書にサインをして、微笑みながら本の販売に余念がない。スミソニアン博物館にはエノラ・ゲイが展示されている。それも被爆の悲惨さを伝えるためではなく、戦争を終わらせた美談の象徴として…。国やその国の人々を憎むのではなく、人間の愚かさを知り、世界中の人々たちが改めて「人間として、してはいけないこととは何か?」を考えること。これこそが唯一「原爆」を投下された国として、日本が世界中に発信しなくてはならないメッセージではないだろうか?

「愛は地球を救う」なんて偽善的で表面的な番組をつくり、子どもたちが瓶に入れた小銭を寄付する、といった行為で自己満足させながら「いいことしちゃった…」と思わせる。そんなことが私は子どもたちのモラルの醸成につながるとは到底思えない。できれば局さんたちよ、全局協力して、8月6日だけは24時間「原爆」についての番組を流してくれないだろうか。


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femto

山口さんの話は大変興味深いです。
TBさせてくださいね。
by femto (2005-08-09 12:07) 

もりけん

makoさん、お読みいただきありがとうございました。ごくごく個人的な意見ばかりのblogですが、また、ご感想をお聞かせください。
by もりけん (2005-08-09 14:24) 

こーさん

「愛は地球を救う」なんて、タレントを集めたイベント番組が地球を救うわけがないですよね。24時間「原爆」についての番組を!の提案に賛成です。
子どもたちには、戦争には「正義」などというものはないということ、殺す側の言う「正義」の実体を知り、心に刻んでほしいです。
by こーさん (2005-08-11 12:25) 

せせらぎ

「原爆に思うこと」のブログ、私にはうまく伝えられない思いを、正確且つ的確な言葉で代弁してくれてるようで、読んでいて大変感動いたしました。過去の歴史の過ちから我々は学んで同じ事を繰り返さないように努める良い意味の冷静さを持つべきなのでしょうね。戦争に加害者も被害者もない!戦争は生産性もなく、まったく誰にも意味のない行いです!こちらのブログにたどり着けて幸せに思います!これからも時々お邪魔します!
by せせらぎ (2005-08-12 00:45) 

もりけん

こーさん、コメントありがとうございます。ギャラをもらって出演しているタレントによるチャリティー番組なんて、ねぇ…。こうして賛成です、と書いていただけるとblogを始めてよかった、なんて思ってしまいます。また、ご意見をお聞かせくださいね。
by もりけん (2005-08-12 03:47) 

もりけん

せせらぎさん、心のこもったコメントをいただき、とてもうれしく思います。私の意見は本当に小さな「声」だと思いますが、小さな「声」でも出さないよりはいい、と思いながら続けていきます。ふだんは、あまり真面目なことは書いていませんが、時々、どうしてもこういうことは伝えなきゃ!なんて熱くなったりして、こういったテーマにも取り組んでいきます。どうぞ、今後も、よろしくお願いいたします。
by もりけん (2005-08-12 03:54) 

本当に、世界はアメリカに寛大だと私も思います。
原爆について、アメリカの子供は一様に「戦争を終わらせ、これ以上の犠牲を出さないために使用された」と教えられる。これ以上の犠牲って、いったいなんなんでしょう?第2次大戦以降、アメリカが関わっている数々の戦争を考えると可笑しくさえあります。今日は終戦記念日ですね。私も戦争を知りませんが、祖父は戦後シベリア抑留から運よく帰還、母は実母を満州で亡くし、3歳の妹の手をひき6歳で命からがら引き上げてきました。当時の話を子供の頃からずっと聞かされてきた私には、自分と関係ないこととしては考えられないのです。これからこういう生の声を聞く機会はどんどん減っていきますね。戦争の愚かさを次の世代に伝えることは私達の使命でもあると思います。またお邪魔しますね!
by (2005-08-15 08:14) 

もりけん

nadiさん、お読みいただきありがとうございました。ショッピングセンターなどで見かける、子どもを連れている家族たちの振る舞いや、街中で見かける若者たちのマナーにいつも首をひねっている私にとって、nadiさんのような方からのコメントは、気分をすっきりさせてくれる清涼飲料水みたいです。わたしも母親からはB-29による爆撃のことを。親戚や父親からは満州のことなど、よく聞かされました。悪さをすると、いつも「おまえみたいな奴は軍隊に入れて、しごかないかん」(名古屋弁)と言われました。(笑)
by もりけん (2005-08-16 14:26) 

大井sigeki

大変貴重な意見でした。私も意見をブログで述べてますので
是非トラックバックさせてくだい。
by 大井sigeki (2005-09-05 03:29) 

yamamoto

はじめまして.アメリカ政府の謝罪はかなり時間がかかるでしょうが,心あるアメリカ市民は,このほど長崎から広島まで,謝罪の行進をしました.TBをご覧下さい.反米帝ジョークの本もお薦めです.「世界反米ジョーク集」(中公新書ラクレ).
by yamamoto (2005-09-05 06:39) 

もりけん

トールバズさん、コメントをいただきありがとうございました。トールバズさんの意見も読ませていただきました。私自身も亡くなった兵士のことについてはよく考えます。戦争を語ろうとすれば、あまりにも憤りを感じる部分が多くて、どうしても散文的な書き方になってしまいますよね。まぁ、マイペースで
思ったことをお互い書いていきましょう。ところで、ジョンの写真いいですね!私はダコタアパート前に立って腕組みしている写真(オリジナルプリント)を部屋に飾っています。

yamamotoさん、興味深い情報を教えていただき、ありがとうございます。反米帝ジョークの本も面白そうですね。こんど、アマゾンで注文しますね。また、私のブログについても、ご意見をお聞かせください。
by もりけん (2005-09-05 19:25) 

arbinoni

国としてのアメリカの狂気はおっしゃるとおりですが、私のアメリカ人の教え子は皆、広島のPEACE MUSEUMを涙を流していました。アメリカ政府の傲慢と個人としての教養あるアメリカ人の良心の間には本当に大きな乖離があります。バークレー在住の日系3世が作った広島被爆者のドキュメンタリーがアカデミー賞候補に上ったということに一縷の望みを繋いでいるのですが・・・
日本でも、ここの読者さんたちのような良識のある人々がいる一方で、原爆ドームを見下ろすマンションを建てようとする開発業者、それを許す日本の行政があったり、政治家はどんどん鷹派になり・・・驚きを禁じえません。
24時間反戦テレビ、私も大賛成です。
by arbinoni (2006-03-10 16:01) 

もりけん

arbinoniさん、コメントありがとうございます。実際にアメリカに暮らしていらしたarbinoniさんのような方から、そういったお話をお聞きすると「あー、そうなんだ、よかった」と思います。でも、本当にお約束のニュースを流すだけの投下日のテレビ局も腹立たしいですね。たったひとつの直接被爆国なんだから、スポンサーに協力して貰って、その日にオンエアされるCMは全部「反戦メッセージ」のものにするとか、海外からも反戦CMを募集して流すとか、ね、その気になればできそうなのに。
by もりけん (2006-03-11 01:25) 

めぎ

ようやく、その記事までたどり着きました。
ドイツに来て、アメリカの見方がこんなにも日本と違う、ということに非常に驚きました。ドイツの人たちは、ナチスの犯した非を全面的に認め、日本の戦後教育にはとても及ばないような徹底した反ナチス教育を行い、フランスと共同で歴史教科書をつくるなどの努力をしていますが、その一方で、教会の鐘を落としてしまうほどの爆撃や空襲と、日本への原爆投下は行き過ぎ、これはテロ行為とも言える、と言う人が多いのです。欧米、と一括りにしがちな日本からやってきた私は、米と欧の間には相当な隔たりがあることを知りました。世界はアメリカに甘い、たしかにそういう面が今でもありますが、EUではだんだんそうでもなくなってきているように伺えます。
by めぎ (2007-07-23 06:25) 

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